インタビュー

【多田恭子】「生きる権利を守りたい」 タンザニアを経て、学び続ける看護師。

看護師として働きながら、母子保健の修士課程修得を目指す多田さん。すべての子どもに生きる権利を。タンザニアの小児病棟での経験が、その思いを一層強くさせます。「五感が鈍らない生き方」を信念として持つ彼女が思う、人として生きる上での幸せとは。
多田恭子
多田恭子(ただきょうこ)
看護師

看護師として、タンザニアへ。

どんな活動をしていますか?

JICAと聖路加国際大学大学院の連携事業があり、青年海外協力隊の看護師隊員として、約2年タンザニアの小児病棟で働きつつ、大学院生としての研究活動も行っていました。
私の小児病棟への配属目的は、「新生児・乳幼児ケアの質の向上」。2日に1人は亡くなるような臨床現場で目の当たりにするさまざまな問題を、現地の人たちとともに、優先順位を付けて解決していく活動をしていました。 

【タンザニアでの活動の例】
圧倒的な看護師不足の新生児病棟。出産後の母親教育がされていないことが多く、多くの母親が「母乳がでない」と悩んでいたため、医者・看護師と出産後の教育ビデオを作成し、テレビを購入し、最低限の教育が全ての母親に届くように整備した。

昨年10月に帰国し、2,500g以下で生まれた低出生体重児の母親の母乳育児に関する修士論文を書き上げ、本来であれば3月に修了予定でした。

しかし、修了を1年延期して助産師を取得するコースに転科。新生児死亡を防ぐ鍵が「母乳ケア・完全母乳育児教育の推進」と言われているにも関わらず、外来に「母乳が出ない」と相談に来る母親に対して、何もできなかった自分が悔しく…。タンザニアにいる母乳育児ができない母親は、泣きじゃくる新生児に対して、安全ではない水や栄養価の低いスープを与えるしかないため、結果、下痢や栄養失調で子どもは亡くなってしまうのです。

この仕事を選んだ理由は?

小学生のとき、NYの国連に行き、「世界には5歳の誕生日も迎えられない子どもが3秒に1人死んでいる」という事実に衝撃を受けて、その不平等、格差をなんとかしたいと思ったからです。

多田恭子

看護部長と小児病棟の師長さんたちと帰国前に。

今、特に力を注いでいることは?

学業!研究!
生まれたすべての子どもが平等に持っていていいはずの「生きる権利」。それを守るためには、UNICEFを始め、子どもの代弁者として活躍している人たちのいる環境に自分の身を置き、知識と技術、経験を得る必要があります。それには修士課程の修得は必須、継続的な研究も必須なのです。

多田恭子

Kangaroo病棟にて。

日本への違和感と誇りと。

日本に帰国して思うこと

今、日本に、疲れている人はいませんか?
私は、タンザニアから帰国してからしばらく、日本社会に疲れてしまいました。

コンビニに行ってお茶を買いたいのに、お茶の種類が多すぎて、選べませんでした。
レストランに行ってメニューが多すぎて、注文できませんでした。
早朝電車に乗ると、黒・白・グレー・ボーダーの服装の人しかおらず、目が喜びませんでした。
臭いに対するエチケットがしっかりしすぎていて、「くっさい!」と嗅覚が刺激されることもありませんでした。
駅のホームですれ違いざま、少し腕が当たっただけで「チッ」と舌打ちされて不愉快になりました。
カフェに行くと、笑い声はなく、みんなパソコンとのみ会話していて、すぐ出たくなりました。

…こんな感じで、変に日本社会の粗探しをしてしまったような気がします。

それでも世界中を旅していて、「日本人」だということで嫌な思いをしたことはありません。むしろ、みんな「ジャッパーン」と受け入れてくれ、それどころか尊敬されている気さえします。
それは過去のご先祖さま、そして現在の日本国民が築き上げた成果の賜物だよなぁと今あらためて思います。嫌なところもいっぱいありますが、日本国民でいられることにあらためて誇りを持てました。
多田恭子

信念に従って、未来へ突き進む。

幸せを感じるのはどんなとき?

家族とリビングでダラダラしてる時、
大切な友達とくだらない話をしている時、
屈託ない笑顔の人と同じ空間にいる時、
今日も「ありがとう」って言える人がいる時、

すごい幸せだなぁって思います。

信念やモットーはありますか?

自分の五感が鈍らない生き方、アドレナリンが出る方の選択をすることです。(親を悲しませない程度に…)

3年後、5年後、10年後、そしてその先

3年後:UNICEFで働いて、国際機関の仕事や今後のビジョンを知りたい。結婚したい。
5年後:看護師として現場に戻りたい。子どもも欲しい。
10年後:大学の先生になりつつ、タンザニアに関わっていたい。

?年後:自分が国際社会で学んだことを、日本にどういう形で還元できるか考えたい。

生涯:日本や外国、子どもや大人、女性や男性関わらず、目の前の人に思いやりを持って生きていきたい。

多田恭子

マサイ族の結納式にて、子どもたちと。

Q&A

趣味 人が笑った時のクシャっとなる笑顔を見ること。
あとサプライズ!お散歩も。
特技 初対面の人とすぐ仲良くなれる。
資格 看護師、保健師
好きな映画 となりのトトロ、The Greatest Showman、パッチアダムス
好きな音楽 ナオト・インティライミ、高橋優
好きな言葉 Furaha(タンザニアでのあだ名。スワヒリ語でHappyって意味。)
好きなアーティストや著名人 パッチアダムス、マザー・テレサ、渡辺直美
好きな本やマンガ 大きな木、魔法の鏡、ワンピース
好きな休日の過ごし方 明日死んでも後悔しないくらい自分に素直に過ごす方法
リフレッシュ方やストレス解消法 ストレスの原因となってるものをいったん放棄。
脳みそが勘違いするくらい、ともかく笑う!
毎日必ずやっていること ありがとう日記
時間とお金が膨大にあったらしたいこと 介護士・保育士の給料UP
子どもの頃の夢 パン屋さん!
尊敬する人 自分にないものを持っている人みんな
座右の銘 初志貫徹、辛い時こそ笑顔
学生時代の活動 旅人
直近の目標 助産師国家資格取得
人生で大切にしたいもの3つ 【1】家族
【2】命
【3】友達
理想の30代とは 日本の合計特殊出生率への貢献

多田恭子
大学卒業後、小児病棟の看護師として慶應病院で働く。2年間の青年海外協力隊としてのタンザニア経験を経て、現在は聖路加国際大学の院生として学業に専念している。

「88’sのさまざまな分野の人と繋がって、そこから何かを産み出したいっ!」

関連記事

  1. インタビュー

    【佐々木みづほ】私の人生の責任は、私にしか取れない。

    一度は大手企業に勤めながらも、自らを見つめ直し、自分が本当にやるべきこ…

  2. 大迫つばさ

    インタビュー

    【大迫つばさ】「仕事上の付き合い」なんて関係ない。 先入観なしのつながりが自分を生かす。

    職場初の女性メーカー営業として、ライフステージに合わせた働き方を模索し…

  3. 家泉美希

    インタビュー

    【家泉美希】「悪くなったら病院へ」のサイクルを断ち切りたい。

    職場体験と家族、2人の“おばあちゃん”との関わりを通して、仕事では理学…

  4. 渡辺舞

    インタビュー

    【渡辺舞】好きな場所で、好きな仕事をするために!

    「そんなに焦らなくてもどうにかなるし、周りと同じようにしなくても良いし…

  5. 丸山紗來

    インタビュー

    【丸山紗來】忘れかけた美容の夢を、つかんだ勇気。

    「美容の仕事」と聞いて思い浮かんだものの少なさ、自分の見地の狭さに愕然…

  6. 木村綾香

    インタビュー

    【木村綾香】やりたいことをやる。カギはコミュニケーション。

    「一番キツそうだったから」と最初に選んだ営業職。「かっこいいかな」と目…

最近の記事

  1. 丸山紗來
  2. 88'spot イベント募集
  3. メロトゲニ
  4. 丸山裕理

アーカイブ

  1. 砂川浩人

    インタビュー

    【砂川浩人】好きなことを仕事に。だからこそ全力で。
  2. Lili

    インタビュー

    【Lili】五感を満たして、ポジティブにいこう!
  3. メロトゲニ

    インタビュー

    【演劇ユニット メロトゲニ】女子3人、三位一体で演劇界を開拓する。
  4. 大迫つばさ

    インタビュー

    【大迫つばさ】「仕事上の付き合い」なんて関係ない。 先入観なしのつながりが自分を…
  5. 木村綾香

    インタビュー

    【木村綾香】やりたいことをやる。カギはコミュニケーション。
PAGE TOP