インタビュー

【演劇ユニット メロトゲニ】女子3人、三位一体で演劇界を開拓する。

北海道出身の女性3人からなるユニット「メロトゲニ」。演劇を主体とし、作家・演出家、女優、美術というそれぞれの個性を活かし、音楽や服飾美術に富んだ作品を発表している。なんと、3人ともB型で猫好き、猫飼いの88’s! 第3弾となる公演を直前に控えた稽古場に潜入し、彼女らの魅力に迫った。

メロトゲニ

メロトゲニ/北海道出身
左から、金 子ゆり(美術)、原 彩弓(女優)、村田こけし(作家・演出家)

互いに刺激し生まれる、個性の相乗効果。

まず、メロトゲニさんのことを教えてください!

村田:元々、3人とも北海道で活動していまして、前身となる劇団「おかめの三角フラスコ」があったんです。役者は原ちゃんの他にも数人、私が脚本と演出、金子さんはフライヤーや音楽を担当していたんですが、ほぼそのまま東京に飛び出てきました! 普通の劇団って役者がたくさんいて、脚本家はいるけどそれ以外の美術などは外注のことが多いんです。そこをメロトゲニは私たち3人がそれぞれの強みを活かし合いながら、そしてそれぞれの分野からいろんな人を巻き込むことをコンセプトに活動しています。

どのような舞台を作られるのですか?

村田:さっきお見せしたのは冒頭のシーンで、シュールでほのぼのとした感じでしたが、この後からドロドロな展開になっていくんですよ! 毎回、女性の内面を描いているんですが、今回はある女性の人生を過去から追いながら、ノスタルジックでもありつつ、怖い部分もありつつ、女のブラックな部分をファンタジーで表現しています……。稽古場はいつも先ほどのように元気なんですけどね!

原:特に女子が観て、「あー、わかる」って共感する内容です!

気になりますね。過去の公演フライヤーも見させていただきましたが、どれも世界観が様々で可愛いですし、想像力が掻き立てられます。

金子:衣装や舞台美術もかなりこだわっていますね。フライヤーはほとんど内容を知らないで作っていることが多くて、ざっくりとしたあらすじからイメージをしていって……。

村田:金子さんのことはすごく信頼していて、まるで私の頭の片割れみたいにすごくシンクロするんですよ。大体フライヤーを作るときって物語に合わせて細かいイメージでオーダーするんですが、私たちはそうじゃなくて「大体こんな感じで」ってざっくりとしたオーダーを出すんです(笑)。そうすると金子さんがそこにプラスαしてくれて……、ぼんやりとしたイメージにシンクロした上でさらに越えてきてくれます。100だったものを200、300にみたいな。技術は持っていても、自分の脳みそを具現化してくれる人って、なかなかいないですからね!

金子:例えば、そんなオーダーされていないのに、急にブランコと砂場を作っていったことがありました。それで役者が遊べて、舞台がどんどん面白い空間になったらいいなとは考えています。

そんな環境の中で、原さんはどんな演技を意識しているのですか?

原:私はこけしちゃんとは大学の頃に出会って、一緒に今まで割と長い時間を過ごしているんですけど、彼女の作る台本が毎回こけしワールド全開なので、その役に少しでも近づければという感覚でやっています。ただ作品ごとに課せられるものが別のベクトルからくるので、毎回ひとつ山を越えなければという覚悟で、私も彼女の作品とともにステップアップしていけたらいいなとは意識していますね!

役の設定はどう作るんですか?

村田:女の子が主体となるお話が多いので、なんか女の人が持っている嫌な気持ちってこうだよねって話していって作ります。我々もいい大人になってきていますが、若い頃に感じた気持などを掘り起こして、役に乗せていくことが多いですね。

原:女の子同士の気持ちとか男性に対する気持ちとか、成長に合わせて各年代でそれぞれ感じてきたことがあるから、物語にあわせて引っ張り出してくる感じです。

村田:今回は特に20代最後の作品となるので、いまでやってきたもののミックスし、集大成でもありながら30代、大人に向けての一歩を作れたらなという思いで臨んでますね。

メロトゲニ

この日のメインはオープニングのダンス稽古。

偶然か、必然か……。気が付いたときは東京に!?

では、それぞれどうしてこの道を選んだのか、お伺いいたします!

原:私は高校時代から演劇をやっていて、卒業後も音響や照明など舞台を総合的に学べる短大に進みました。ただ当時は興味本位で、役者で食べていこうなんて考えてはいませんでしたね。でもそこでこけしちゃんと出会ってしまったんです(笑)。彼女と何人かのメンバーとで劇団を立ち上げて、長いこと札幌で活動していました。東京に出てきたのは25、6で少し遅めかもしれないのですが、人生一度きりだしどうせやるならどこまでできるか目指したいという感覚で、面白いものが集合しているイメージの東京に出てみないかって!

村田:私は学生の頃は演劇とかやっていなくて、観る文化すら無かったんです。いろんなこともそこそこでこなしてきたんですが、ある時、舞台が原作の映画を観たのがきっかけで、舞台の魅力に取りつかれました。舞台って本当に際限がなくて、なかなか完成形が自分の中で見えないところに挑んでいくのがすごく面白いんです。なので自分が演技をするという選択肢よりも、何か生めるということ、それが誰かの手によって見えるようになるということがすごく快感で、辞められなくなりましたね。辞められるなら辞めたいんですけど(笑)

辞めたいと思うこともあるんですか?

村田:大変なことも多いですし、できるならお金をたくさん稼ぎたい……。でも自分がやるべきことをしっかりやっていると、出会うべき人と出会えて、ますます世界が広がっていくんです。例えば今回のフライヤーに推薦文もいただいた川尻恵太さん(SUGARBOY)や川本成さん(時速246億)はこの世界で活躍されている先輩なのですが、そういう方にも認めてもらってるというか応援してもらえるようになりましたし、今年に入ってからはそれぞれでもお仕事をもらえるようになってきたので、本当にありがたいです。

金子:私は高校時代から美術をやっていて、当時からフライヤーとかも作ってました。実は高校がこけしちゃんとは一緒だったんですよ! クラスまで同じだったんですけど、違うグループ同士であいさつはする程度。その頃はお互いに演劇とも関わっていなかったし接点はありませんでした。私はその後大学に行って彫刻を学んでたんですけど、卒業した直後に偶然にも道でこけしちゃんに再会したんです! 「今何やってるの?」って聞いたら演劇やっていて、私が美術やってることを伝えたら、「チラシ描いてよ」って……。それが始まりで、何公演かフライヤーを描いた後に、舞台美術もやらないかって誘われて、彫刻などの立体造形が好きで〝公園〟を作りたいという夢があったんですけど、なんか面白そうだなと!

それでブランコなんですね!

金子:そうです、そうです! ちょうどいいというか、やってみたいと思って舞台美術も始めて、いつの間にか気づいたら東京にいました(笑)。「金子さんも行くよね?」ってこけしちゃんに誘導され、軽いノリで「行く、行くー!」って。楽しいほうにどんどん進んでいくタイプなんで。

メロトゲニ

三者三様の個性を持ちながら、仲良しオーラにあふれる彼女ら。

密なコミュニケーション、妥協なき〝楽しませる〟ことへの追求。

ものづくりするときに、大事にしているポリシーはありますか?

村田:あります! 絶対に多数決とかでは決めないことです。3人で会議の時にそれぞれ何か考えを持ってくるんですけど、その時に一発で否定しない――、必ずみんなでそれぞれ考えるようにはしています。3日に一度くらいのペースでは話すんですけど、多少は非効率でも絶対に集団として作っていくのを意識していますね。主催だから、役者だから、制作だからとか、誰の意見が強いとかではなく、みんなフラットに発言できる関係でいたいですし、「実はあの時言えなかったんだけど……」とかが一番嫌なので。

金子:風通しのいい感じです!

今後のビジョンはありますか?

村田:あるんですよ。一応、次回公演は決まっていて、徐々に規模は大きくしていくことも考えながら、それぞれ違う才能が集まっているので、どこへ行っても私たちがいれば、お芝居が作れるっていうパッケージも将来的には確立したいです。あとは例えば美術に特化したイベントなど、それぞれの活動から派生したイベントをやっていく予定で、主体は演劇なんだけど、形に囚われることなく私たちらしい活動ができたらと思います。

それから暗いジメジメした、演劇の閉鎖的なイメージを壊したい! なのでバンドの友達に曲作ってもらったり、映像も演劇とはまったく関わりのない人に頼んだりして、新鮮な空気を入れたり、他の世界との接点は積極的に作っていこうともしています。

今日の稽古を観ていて、役者さんだけでも個性的な方ばかりでしたね!

金子:そうなんです、キャラが濃い(笑)。いろいろな人を集めていきたいです!

村田:憧れの先輩たちを含めいろんな方にご協力いただいているんですけど、媚を売るんではなく私たちはこういうことをしていますって明確に、正直に出すようにしていますね。そうしていたらみなさんが手を差し伸べてくれて、本当に感謝です。

大変なことも中にはあるのでしょうか?

村田:どこもそうだと思うんですけど、いかにたくさんのお客さん観ていただくかですね。東京は劇団の分母も多いし、面白いものをやってる方も多くて、いつもその壁にはぶつかっています。どうやって打破していくか考えて、それで公演に向けての稽古期間は毎週木曜日にSNSを通していろんな情報を発信していくようにしています。お客様に本番までの時間も楽しんでいただけるような仕組みになればいいなと思っていますね。最近では原ちゃんが狂気的な絵日記を書いたり……。

原:普通だよ! 可愛い日記です(笑)。本番だけじゃなくて、普段からメロトゲニとお客さんで少しでもコミュニケーションが取れれば嬉しいですよね。

金子:あとはオリジナルグッズもたくさん作っています。毎回、ハワイのお土産みたいなダサ可愛いキーホルダーやTシャツを作ったり……。結構こっちにも力を入れていて、普段から使えるものや、公演終わってもメロトゲニを持ち帰ってもらって、また思い出して楽しんでもらえるようにと工夫しています!

メロトゲニ

冒頭シーンの通し稽古。個性豊かなメンバーで展開する物語!

20代最後、節目の舞台にかける想い、そして未来。

全員が88年生まれということで、この世代に対して感じることはありますか?

村田:前から思っていたことなんですけど、バイタリティーがある気がします。辞めちゃう人が多い中でも、同い年で演劇を続けている人は多いですね。直観ですけど、有名な俳優さん、女優さんも88年生まれが多いですし!

金子:演劇以外でも同じ学年の方たちってバイタリティーがあるなって感じますね。北海道時代から制作を担当しているメンバーも、今回の音楽を作っている東京で活動されてる方も同じ88年で、なんか引き合う力もあるのかな?

原:同世代で活躍されている方がいると、助け合えるのもそうですけど、モチベーションというか「負けられねぇな」と思えるのがすごくいいです。よきライバルでもあります。

では最後に、公演本番に向けて、見どころの紹介や意気込みをお願いします!

金子:メロトゲニとして過去2回の公演をやって、原ちゃんがいままで主役とは別のキーパーソン的な立ち位置だったんですけど、20代最後の作品ということで初めて原ちゃんが主役となって物語が展開していくので、個人的には彼女の役の作り方や生き様を第一に観て欲しいですね。実は構想を練る前から私が駄々を捏ねて、こけしちゃんに「原ちゃんが主役の公演が観たいんだよね」ってずっと強く言っていたんです(笑)。

原:そうだったの!? 東京に来てから3回目の公演ではじめての主役なんですけど、どんどん規模も大きくなってきていて、プレッシャーも感じています。いまはダンスもボロボロで……、みなさまにお金をいただいて満足してもらえる、「原ちゃんが主役でよかったな」って言っていただけるように前進したいです!

村田:3回目にして結構な大所帯になるので、メロトゲニさらに一皮むけたねって言われるような、ターニングポイントとして記念に残るような作品にしたいなと思っております。同じ88年生まれのみなさんにも少しでも刺激となれるように観ていただきたいですし、年齢や性別に関わらず楽しめる内容になっているので、ぜひ多くのみなさんにも観ていただきたいです! 本番まであと少し、まだまだ頑張ります!

メロトゲニ

 

村田こけし
1988年10月26日生まれ。B型。函館市出身、作家・演出家。メロトゲニ主宰、JCM所属。ファンタジーの世界を軸に、雑貨や服飾など舞台美術にこだわり、女子の心を掴んだかと思いきや、突然なんともミニマムな会話で現実世界を想像させる、毒々しい人間の本性と希望を浮き彫りにしていく作風を得意としている。舞台の脚本・演出に加え、作詩やドラマの構成など活動の幅を広げている。

原 彩弓
1988年4月20日生まれ。B型。海道ニセコ町出身、俳優。札幌にて劇団「おかめの三角フラスコ」(メロトゲニの前身劇団)の立ち上げメンバーとして参加。札幌を拠点に活動し、様々な劇団に客演。 明るく清楚な女性、物静かで薄幸な美女、時に老人男性まで、シーンに溶け込む力でどんな役にも柔軟に対応していく。近年は、舞台「モブサイコ100」や=LOVE主演舞台「けものフレンズ」など2.5次元の舞台のアンサンブル出演などエンタメステージにも出演の場を広げている。

金子 ゆり
1988年6月14日生まれ。B型。函館市出身、デザイン・音楽担当。舞台美術、フライヤー、チラシ、公演グッズ、ロゴなどをデザインする。学生時代に培った立体造形や素材研究の知識を用いて、奇抜な素材を取り入れながらの制作も多く、可愛いものから昭和の香りを漂わせるもの、ダークな世界観まで多岐にわたり、内外から高い評価を受ける。近年は、楽曲制作を手がけることも多くなっている。

Information

次回公演情報 メロトゲニ Page.3
「苦いアーモンドのかじり方。」
作・演出 村田こけし
キャスト 原彩弓(メロトゲニ)、相澤隆史、石座アヤナ、内田めぐみ(ソラカメ)片山英紀(劇団ビーチロック)、白鳥雄介、田中勇輝、十河大地(宝映テレビプロダクション)、長尾真奈美 ※ダブルキャスト、前田幸、まちだまちこ、めんたいこ、山田桃子(ブルドッキングヘッドロック)、山口鯨(劇団・木製ボイジャー14号)※ダブルキャスト、山谷ノ用心
犬飼若博
スケジュール 全7ステージ
9月12日(水)19:30(長尾)
9月13日(水)14:00(長尾)/19:30(長尾)
9月14日(金)19:30(山口)
9月15日(土)14:00(山口)/19:00(山口)
9月16日(日)13:00(長尾)
※9/12(水)19:30の初日公演ではご来場のお客様全員に、スペシャルご来場特典あり!
会場 Geki地下Liberty
小田急線・井の頭線下北沢駅徒歩5分
東京都世田谷区北沢2-11-3イサミヤビルB1F
TEL:03-3413-8420
チケット [全席自由席] 前売券:3,500円 当日券:4,000円
[チケットぴあ] Pコード:487603
[カルテット・オンライン] https://www.quartet-online.net/ticket/mello4
スタッフ 作演出:村田こけし
テクニカルマネージャー:岩淵吉能(株式会社ステージワークURAK)
舞台監督:上田知
照明:樋口優里
音響:島村幸宏
舞台美術・宣伝美術:金子ゆり(メロトゲニ)
音楽:金子ゆり(メロトゲニ)
テーマソング:本棚のモヨコ
振付:めんたいこ(チーム上半身)
映像:22エモン(トウキョウトガリネズミ)
制作:白鳥雄介/佐々木くるみ
企画・製作:メロトゲニ
詳細・最新情報 ホームページ:http://mellotogeni.tumblr.com/
Twitter:@mellotogeni
Instagram:mellotogeni

 

<過去公演紹介>

メロトゲニ

『THE JORNY-909DAYS-チェーンとブロック』(2017)  金子が生み出す美術の造形やテーマに合わせて、村田がストーリーを書き起こすという画期的な企画。

メロトゲニ

『ちょっとそこらの、マドリー』(2017) 女性ならではのさまざまな思考を浮き彫りした物語が衝撃的。

メロトゲニ

『ちょっとそこらの、マドリ―』(2017) 不思議な世界観を生み出す舞台美術も魅力の一つ。

『リトル・エスパーティ』(2018) 〝女子あるある〟が観る者の共感を呼び、中毒性のあるステージを繰り広げるメロトゲニ。

 

取材・文:安江雄彦

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